逢魔ヶ刻動物園(2巻)/堀越耕平 感想
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2011/01/04 00:49:05
2011/01/04 00:49:05
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動物園で唯一、反抗していたライオンのシシドが園の仲間に加わり、一つとなった園長達。
しかし、隣の牛三市にある水族館からの来園者によって大事件が発生! 動物園の仲間・イガラシがさらわれてしまい!?
逢魔ヶ刻動物園は、人に姿を変える動物達と元人間の兎園長がいる奇妙な動物園が舞台です。
先月発売された1巻では、自分に自信のない少女・蒼井華が、「飼育員」として魅力的な「動物達」とかかわる中で生まれる人と動物・動物と動物の信頼や友情、彼女の成長が優しく明るいコメディとして描かれていました。
そして年末駆け込み販売の第2巻。いきなりバトル漫画になっています。
話は面白いです。
世界一の動物園を目指していた「逢魔ヶ刻動物園」の仲間達だったが、常に閑古鳥が鳴いて日々の食餌にも事欠く有様。
そんな折に現れた、年間600万人を超える人気水族館「丑三ツ時水族館」からの使者のシャチ・サカマタ。なんと彼らの水族館館長も、園長と同じ獣化の呪いにかけられているという。
園長から呪いを解く鍵を得るため攫われてしまうイガラシ(アザラシ)。彼を取り戻すために水族館に向かう、華・園長・シシド(ライオン)、ウワバミ(蛇)、大上(オオカミ)、知多(チーター)、加西(サイ)、ゴリラコング(ゴリラ)の8人だったが……。というのが2巻の内容です。
水族館突入後はバトルがメインになるのですが、1巻でも登場していた「逢魔ヶ刻動物園」の仲間達それぞれが、その「動物としての力」(例えば足の速さだったり力だったりサーチ能力だったり)を働かせ、強力な敵と戦う展開には燃えました。
特にメンバーがチリヂリになり水族館組と2on2で戦うことになる後半、圧倒的に不利な状況の中(そもそも動物園側が戦闘能力がない者も多いですし)互いの能力と知恵を駆使して戦うシーンは面白かったです。
敵となる水族館の面々は、二足歩行で人らしく喋りながら一度怒ると最大の肉食獣の本性を晒すサカマタを始め、前後左右に動く強力な手足を持つタカアシガニ、マグロの骸骨を頭に生やして飛ぶように泳ぐマグロの少女、姿を隠し骨のない体で強靭な攻撃を繰り出すマダコなどなど。
「クリーチャー」をイメージして作られたという彼らの姿は奇抜で気持ち悪く、その癖その「動物(魚)」らしさもしっかり残されていました。話の間には初期ラフ画が掲載されているのですが、ちょこちょこその動物の豆知識も書かれています。
また彼らのボスである元人間の青年も、フジツボが生えたメットに顔を覆うマスクと破れたマントという奇妙な出で立ちと、その姿を超えた不気味で凶悪な性格でインパクトがありました。
1巻の一話読みきりほのぼのコメディから突然長編バトルもの(しかもこの巻で終わっていません。続きます)になったので面食らいましたが、それぞれの動物らしさ、キャラクターらしさを見せていくバトルはとても面白かったです。
敵である水族館側が、醜悪な容姿と理不尽な言動のわかり易い「悪役」だったので、唐突な「敵」の出現でもあっさり入り込めたのも良かったと思います。
ただ、やはりどうしても1巻からの急な路線変更が気になりました。
「ジャンプ」という掲載誌上仕方がないのかもしれませんが、1巻のようにコミカルな部分や、暖かく優しい気持ちになれる場面というのはほとんどありませんし、華が動物の様子を見て、その動物知識から問題を解決するという展開もありません。
私は1巻のそういった部分がとても好きだったので、少しがっかりしました(2巻は2巻で十分面白いとは思いますが)。
2巻の「仲間を助けるために協力して戦う」という目的も、1巻のような日常で個々の性格をもう少し見せてくれていたらもっと盛り上がっただろうと考えると勿体無くも感じました。
また全体的に展開が駆け足なのも気になりました。例えば敵が裏切るシーンがあるのですが、そのキャラクターが敵に忠実であったということを敵の台詞からしか察することができないので、あっさりと裏切ったように感じてしまいました。
その分スピード感はあるので、これはこれでありなのかもしれませんが・・・・・・。
1巻を読んで、絵やキャラクターが気に入った方には十分お勧めできると思いますし、獣人が好きなら満足できると思いますが、バトルものは苦手という方や、一巻の1話読切形式が好きだったという方は、内容を確認されてから購入されたほうが良いかと思います。
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