アリサのために(1)/南澤久佳 感想
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2010/10/03 21:23:46
2010/10/03 21:23:46
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そこは秘密の「探偵事務所」。心にひそむ深い痛みを3人と1匹が探って癒しちゃいます!
Yahoo!コミック掲載ページ:http://comics.yahoo.co.jp/magazine/comicya/arisanot01_0001.html
※第一話と最新作が掲載されています。
心に傷を抱えた少女たちを、うさぎ・こうもり・狼の使い魔たちが夢にもぐって癒すゴシックファンタジー。
表紙だといまいち絵柄がわかりづらいのですが、中身は下記のような絵柄です。

うさみみゴスロリの主人公が可愛い。
うさみみ主人公・アリサのゴスロリ服を反映するように、随所にゴシックをイメージしたモチーフが使われています。
「色ならば黒。時間なら夜か夕暮れ。場所は文字通りゴシック建築の中か、それに準ずるような荒涼感と薄暗さをもつ廃墟や古い建築物のあるところ。現代より過去。ヨーロッパの中世。古めかしい装い。温かみより冷たさ。怪物・異形・異端・悪・苦痛・死の表現。損なわれたものや損なわれた身体。身体の改変・変容。物語として描かれる場合には暴力と惨劇。怪奇と恐怖。猟奇的なもの。頽廃的なもの。あるいは一転して無垢なものへの憧憬。その表現としての人形。少女趣味。様式美の尊重。両性具有・天使・悪魔など、西洋由来の神秘的イメージ。驚異。崇高さへの傾倒。終末観。装飾的・儀式的・呪術的なしぐさや振る舞い。夢と幻想への耽溺。別世界への夢想。アンチ・キリスト。アンチ・ヒューマン。」(高橋英理『ゴシックハート』より引用)(Wikipedia「ゴシック・アンド・ロリータ」の項目から転載)
登場する獣人はうさぎのアリサ・蝙蝠のカイリ・狼のユーリの3人。
もともとは動物らしい彼らが、人の姿をしている理由は本巻では明らかにされていません(それらしい話は出ているので推測はできるのですが)。
狼は完全な狼の姿(ただし羽付)に戻ることがありますが、他の2人は羽・耳が生える程度であまり獣人要素はありません。
また主人公たち3人のほか、人間の少女が猫耳しっぽの猫又としてかかれる場面もありました。

切なく綺麗な印象の表紙ですが、意外にも中身はアクション多目の作品です。
アリサたちの探偵事務所を訪れるのは、友人や家族に悩むごく普通の少女たち。
誰もが抱えるような心の傷を持った少女たちは、その傷が具現化する夢の世界では皆怪物としてかかれ、自分の世界の侵入者(アリスたち)を排除しようとしてきます。
アリスたちの役目は、そんな彼女たちの中の「心」を探し出し、傷を癒すこと。
ひび割れ巨大化したり、いくつにも分裂し狂気に笑い叫ぶ少女達と、血にまみれになりながら、対峙する描写は癒し系とは程遠く、トラウマをザクザク突き刺していく様はむしろダークな雰囲気すら漂うのですが、その流れる血とアリサの声で、少女達は自分の傷と向き合っていきます。
主要キャラ3人はイケメンホスト風の蝙蝠に巨乳大好きうさぎ娘、関西弁の狼男とコメディチックなキャラクターが揃っています。
今はなきギャグ王デビューの作者さんらしく、軽い掛け合いはコミカルで楽しいです。
しかし人ではない3人の軽いノリは、逆に少女達の傷、憎悪を際立たせています。
各所に散らばる薔薇やレース・花びらなど、少女趣味でゴシックなパーツも、「人魚姫」「竹取物語」「ラプンツェル」「茨姫」といった少女の童話をモチーフにした夢も、無垢な少女性を強調している用でよかったです。
アリサたちがなぜ少女の傷を癒そうとしているのか、また「アリサのために」というタイトルの本当の意味は何なのか。
少女達の物語だけでなく、アリサたちの謎も気になる物語でした。
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