クリア・クオリア(全2巻)/遠藤海成 感想
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2009/11/10 00:44:01
2009/11/10 00:44:01
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※ファンタジーのような表紙ですが、地球上のどこかの国が舞台の物語です。
来るべき日には貴方のために、この身を鉄クズと変えましょう――。
徐々に四肢が腐り死に至る病気「突発性末端壊疽症候群」俗称「ピノキオ」は、義肢または抗体を持つドナーの手足と"交換"することでのみ進行を防げる奇病。
ドナーであるドロシーは、ある日廃棄寸前の機械人形「プラスティカ」を、貴重な自分の目と交換し手に入れるが・・・。(1巻裏表紙あらすじより)
眼帯少女とアンドロイド青年のビターで優しいおとぎ話。
機械人形「プラスティカ」の青年・ポンコツ(ドロシー命名)は、平然と腕を千切りどんなことでもデータ検索で調べることができる、高性能な医療用アンドロイドです。
彼は非常に人間くさく、人間に刃向ったり嘘を付いたり笑ったりとアンドロイドらしからぬ行動が多いですが、自己認識はあくまで機械で、周囲の人間もまた彼を「機械」と分かった上で人間のように接しています。
自分のことを人間ではなく「機械」ととらえ、機械としての在り方に悩み、またそんな自分を自嘲するポンコツの描かれ方が好きでした。
一方人間であるドロシーはというと、こちらは無表情無感動のそれこそ機械のような少女で、彼女とポンコツの対比も奇妙でおもしろかったです。
作中ではポンコツ以外にも、ドロシーを捕らえにきた軍事用プラクティカと、完全に人と異なった姿の工業用プラクティカなどが登場します。
作品のはじまりは、奇病「ピノキオ」のドナー・ドロシ―と、彼女に拾われたポンコツ、そしてドロシーの保護者ロッドウェル三人の小さな物語です。しかし次第に人の死と策謀が絡み合い、国家を巻き込む大事件へと発展していきます。
登場人物たちの毒舌混じりの軽い会話は遠藤海成さんの『まりあ・ほりっく』と同様楽しいものですが、幼い子供すら襲う肉体が腐る病や商品として見られるドナーなど、重く辛い展開も多いです。
ですが、どのキャラクターもそれぞれがそれぞれに考え生きていることが感じられる、とても力強い作品だとも思います。
二巻完結という短い物語ではありますが、限られた長さの中で丁寧にまとめられている秀作です。
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