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まつろはぬもの~鬼の渡る古道~/木根ヲサム 感想 

まつろはぬもの 1 (ヤングサンデーコミックス)まつろはぬもの 1 (ヤングサンデーコミックス)
(2007/11/05)
木根 ヲサム恒川 光太郎

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まつろはぬもの/木根ヲサム/全6巻/ヤングサンデー連載/和風ファンタジー/妖怪/TSF(女体化男体化)
※原作『風の古道』/恒川光太郎となっていますが、設定から全く違います
風の古道で主人公の導き手であった「古道を旅するレンというキャラクター」だけを共通にした作品です。なお『風の古道』のコミカライズ(短期連載作品)は5巻に載っています。
その為、原作のコミカライズが読みたいという人は、5巻から見られることをお勧めします。1巻から読むと、設定や登場人物の性格の違いに違和感がありそうです。

まつろはぬもの粗筋:心を残した死の魂を喰らい、その魂と同じ記憶と姿で近いものを誑かし、また魂を奪う肉塊「霊喰み」。「霊喰み」に惹かれ古道に迷い込んだ人々が出会う、古道の旅人・レンと犬神・蘇芳の幻想異界奇譚。

感想:土地神に鬼、一つ目の怪物、蟷螂の姿を持った宿場の女などが出てきますが、具体的に伝承として残る妖怪は出てこないかと思います(モチーフとされた妖怪はいるかもしれません)。レンと旅する蘇芳は犬神として作られていますが、どちらかと言えば犬の化け物と捉えた方がよいでしょう。
内容としては創作の化け物「霊喰み」と仇を追うレンの戦いを、様々な人間の視点から描いた物語です。6巻帯にはホラーと書かれていますが、怖さよりも死者や残されたものの苦しみ、哀しみといった悲劇的な要素が強いように感じました。
怖さは感じませんでしたが、驚異的な回復力を持つレンが目玉を抉られたり、腹を裂かれたりする場面や、肉塊に人が埋もれていくなどグロテスクな描写があります。

私はこの本が好きです。
まず絵に惚れました。神の住まう古道は鬱蒼と木々が茂る暗い森がとても丁寧に描かれています。じっと見ていると不安になる程細かい点で構成された藻や苔や、しぶきを上げる力強い水は水木しげるの絵に近いものがあります。人物もきれいです。表紙のカラーもいいのですが、白黒で描かれた絵も艶めかしく、全体的に色っぽいです。
次に話。1巻では死者の姿を借りた霊喰みが、醜い肉塊の姿を晒して哀れな犠牲者を喰らうばかりの話と思いましたが、読み進めると、己の飢餓に耐えてでも愛する人の傍にと願う、必ずしも悪と言い切れない魂喰みも現れます。逆に生者側にも自分を殺そうとした肉塊を、愛した人だと叫んで、レンの鉈から守ろうとする者がいます。
主人公であるレンもまた、魂を持たない人に似せた肉塊でしかありません。笑うことも知らず、ただ記憶にある自分と同じ顔をした母の仇と、霊喰みへの憎悪ばかりで動いていた彼が少しずつ変化していくのも面白いです。
レンの過去も霊喰みという存在も、決して明るい話ではありません。けれども合間合間に犬神の蘇芳(人の姿はヤンキー入った兄ちゃん)が笑わせてくれ、暗くなり過ぎないのでよかったです。
切ない怪奇譚や、あやかしの匂いの濃い雰囲気のある作品が読みたい人にお勧めです。

あと、作品タイトルも好みのものが多かったので下記に。タイトルセンスが好みという人は、おそらく読んで損なしかと。タイトルの下は粗筋です。
<其の一>魄を喰らう肉(はくをくらうにく)
死んだ兄に代わり医者を目指す少女が、兄の幻に古道へ誘われる。
<其の二>隠し神(かくしがみ)
幼い頃の神隠し事件で助かった人間が次々に死んでいると聴いたOL・真珠は、真相を知るため村に戻るが・・・。
<其の三>呼祭(よばいまつり)
盆も近くなった頃、死んだ筈の妻に会ったと娘が言い出した。そしてある晩、娘は妻に連れ去られ姿を消した。
<其の四>黒沼御前(くろぬまごぜ)
「御坂」の女は沼を連れてくる。雨も降らないのに小さな村が水に覆われた日、御坂の清子は水に棲む影に浚われた。同級生の雄介は、古道で彼女を探そうとするが。
<其の五>洞蛇霊(うろかがち)
蛇神に頼まれ霊喰みを探すレンは、幼い蛇神に案内され洞窟を進んで行く。
<其の六>異ツ世(ことつよ)
母の仇を追い人の世に足を踏み入れたレンだったが・・・。
<其の七>陽炎(かげろう)
近頃元気のない姉を心配する理央の前に、見知らぬ男が現れ、その姿は次第に肉塊へと変貌する。
<其の八>犬神刑部(いんがみぎょうぶ)
蘇芳の過去話。
<其の十>浄玻璃鏡(じょうはりのかがみ)
敵として出ていた霊喰みの過去話。
<其の十一>返魂(はんごん)
仇打ちの終焉・物語の収束。

1巻は其の三途中まで、2巻は其の四途中までと雷に纏わる読みきり。3巻は其の五と連の母に纏わる短編<山比賣(やまひめ)>までで、レンが女になるおまけ漫画も収録。ここまでは伏線があるものの読みきりとしても楽しめるかと。
4巻は其の七途中まで+番外編。5巻は陽炎と<風の古道>、6巻は其の八~其の十一です。4巻以降は、話のつながりが強くなっています。

TSネタもちょっとありました。
3巻のおまけが夢落ち女体化ネタ。無口な鉈持ち少年・レンがロングヘアを布で縛った学ラン美少女に。かわいいです。
また5巻では女性の姿をしていた霊喰みが、男の霊喰みに変貌します。ただし姿と同時に心も変わってしまうため、TSとしては微妙なところです。
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