帝都雪月花 昭和余禄・昭和怪異始末記/辻灯子 感想
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2009/08/17 00:06:13
2009/08/17 00:06:13
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元号改まり間もない帝都・東京の片隅にひっそり佇む貧乏道場。ある日そこにふらりと現れた自称妖怪退治屋・神代秀真と道場の一人娘・和佳が繰り広げる奇妙なお話。辻灯子のレトロファンタジー4コマ、ご堪能あれ!(出版社内容紹介より)
「雪月花」は「ゆきつきはな」と読みます。
昭和2年の帝都を舞台に、貧乏おばけ道場の一人娘で喧嘩っ早い元気娘・和佳と、妖怪退治屋・秀真、飼い猫又の寅吉が繰り広げる、ちょっと不思議なあやかし物語です。
全ての話に幽霊か妖怪が登場しますが、レギュラーの妖怪は猫又のみです(背景などには天狗や小鬼のもあり)。神様である蛇神も登場しますが、感覚としては神様というよりは妖怪以上神様未満といったところ。
舞台である昭和2年の帝都を、丁寧に調べられています。着物やレトロな建物、今では使われない言葉などが、人の世ではない幽霊や妖怪といったものの非現実感を強調しています。時代もので妖怪ものと割り切れば楽しめるかもしれません。
しかし、4コマ漫画としてはあまりお勧めできません。
シュール系やらエログロギャグならともかく、(おそらく)ほのぼの4コマで、事故で死んで体を捜す子どもや、血を流しながら泣く女の子の後にオチをもってこられても、笑えるものではありません。また、一つの物語を無理やり4コマ漫画にしており、場面転換が激しく、キャラクターの心理もよくわかりませんでした。特に謎の青年・秀真が、伏線を張るだけ張って終了してしまったのがもったいないです。
掲載誌の路線変更為か、ストーリー自体もよく分からないまま始まり、よく分からないまま打ち切りというのも残念でした。
その後、掲載誌を変えてショートストーリーとして連載されたものがこちら。
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昭和黎明、幽明の境を跋扈するは現世ならぬ有象無象の輩――辻灯子の異色ジャパネスクファンタジーがコミックスで登場!前作との間をつなぐ「はこの中」を含む、描き下ろし2本を加えた珠玉の短編集です。 (出版社内容紹介より)
4コマ毎に落ちをつけなければならない4コマ漫画の制約がなくなり、一層昭和初期+怪異譚という色が強くなっています。妖怪では猫又、蛇神、狐火に鬼。幽霊では生霊やドッペルゲンガーも登場。内一話は和佳を好きになった女の子との百合な話になっています。古風な百合描写は、切なくて良かったです。
掛け合いは明るいですが、人を恨んで死んだ人間が発端の事件や奇妙な話が増えています。読んでいて楽しい、面白いといった話ではありません。
本としてはまとまっていますが、やはり全体的に説明不足で、秀真の謎も残ったままですので、そういったことがあまり気にならない人向けです。
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