あぶない丘の家/萩尾望都 感想
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2009/08/04 00:40:41
2009/08/04 00:40:41
![]() | あぶない丘の家 (小学館文庫) (2001/11) 萩尾 望都 商品詳細を見る |
マヒコこと平羅坂真比古には変わり者の兄がいる。安曇という名なので「アズにいちゃん」とマヒコはよぶ。性格は当然エキセントリック、時空を飛べたりもするらしい。だからマヒコの日常はスラップスティック!怨霊少女と対決したり、義経を追って源平の合戦を見物したり、果ては滅亡後の地球から未来人までやってくる!なかよしだけど正体不明、アズにいちゃんっていったい何!?(裏表紙粗筋より)
「あぶない丘の家」シリーズ4作が収録されています。基本的なキャラクターは共通するものの、話の方向性は全く異なり、1作ずつが独立した短編になっています。
「あぶないアズにいちゃん」 両親を亡くしたマヒコと「アズにいちゃん」を襲う怪奇現象の話。ホラーテイストが強く、少しミステリー要素もあります。作中「アズにいちゃん」が女性になり、周囲にも元々姉だったと認識される場面がありました。ただしページ数は5ページと短いです。BLではないと思うのですが、アズにいちゃんがやたらとマヒコにキスをしてくるので、苦手な方は避けた方が無難です。
「あぶないシンデレラ」 猫かぶりの医大生とマヒコのちょっと不思議な話。繰り返し見る殺人の夢など気持ち悪い面もありますが、夢の中で毎回シンデレラ(女装)だったりと、怖さよりも奇妙な印象が強い作品です。
「あぶない壇ノ浦」 読みきりですが、184ページと非常に長い作品です。
源頼朝と義経に興味を持ったマヒコは、なぜか頼朝と義経に関わる時代・場面にタイムスリップしてしまうようになります。
始めはマヒコがタイムスリップして歴史を知る、社会の教育漫画のような印象を受けましたが、マヒコに知識を与える「教師役」の友人が、偏った意見を持つ頼朝派、義経派、平家物語ファンの友人というのが面白かったです。完全に食い違う意見に困惑するマヒコと一緒に、「頼朝」と「義経」どちらが正しいのかと考えさせられます。一応の答えは作中で出されていますが、それぞれについてもっと調べてみるのも面白そうだと思いました。
「あぶない未来少年」 私はこの話が一番面白かったです。こちらも長く、171ページありました。
隕石の落下で人口が激減し、多くの動物・人間がアンドロイドに代わった未来からやってきた少年の話で、地球最後の日・タイムパラドックス・アンドロイドと、SF的な要素が詰め込められています。メインとして登場するのはターミネーターのような無表情なアンドロイドが一体だけですが、未来世界の回想シーンで、動物や人間らしい人型のアンドロイドなど、様々なアンドロイドが登場します。また、特殊な未来世界の設定がとても面白かったです。
1話ずつが長いので、手軽とは言いづらいですが、SF作品が好きな方にはお勧めです。また萩尾さんのファンである森博嗣さんが、やたらとテンション高い解説をされているので、こちらのファンの方も楽しめるかもしれません。
ちなみに森博嗣さんは、同作者の『トーマの心臓(感想)』のノベライズもされています。
続きは、「あぶない未来少年」のネタバレ感想です。
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