映画『1999年の夏休み』(原案『トーマの心臓』) 感想
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2009/06/10 21:28:43
2009/06/10 21:28:43
今回は映画の紹介です。
『トーマの心臓』という漫画があります。1969年にデビューして以来、今なお漫画界の一線で輝く萩尾望都が『少女コミック』で1974年19号から52号に連載していた作品です。
トーマの心臓/萩尾望都/全1巻(コミック文庫版)/少女コミック連載/学園もの/BL?
ある雪の日、少年トーマが「これは僕の愛、これは僕の心臓の音」という謎めいた遺書を先輩であるユーリに残して鉄道から飛び降りたことからこの話は始まります。
受け取った遺書を引き裂いてトーマと決別するユーリ。しかしそこへトーマそっくりのエーリクが現れます。
子どもっぽいけれど真っ直ぐなエーリク、品行方正を装いながら暗い淵でもがくユーリの他、ユーリと父への思いを抱えたシニカルな少年オスカー、オスカーを慕うアンテといった少年たちが登場します。
ドイツのギムナジウム(男子のみの高等中学)で、彼らは苦悩し、傷つき、そして時に傷つけながら「愛」というものを知って行きます。少年同士のキスシーンなどもあります。ですが性的なものではなく、描かれるのは純粋な人間愛――人が人を愛するということ。
同性愛ものなのでは?と躊躇するかもしれませんが、図書館にも置かれているかと思いますので、ぜひ手に取って見てください。
そしてこの少年同士の物語を原案として制作されたのが『1999年の夏休み』です。
1999年の夏休み/日本映画/1988年制作/青春映画/SF
粗筋:舞台はある全寮制の学院。初夏、悠が湖に飛び込んで自殺し、そして夏休み。和彦、直人、則夫の3人だけが家に帰らず寮に残った。悠は和彦に想いを寄せていたのだが、それを拒絶されたために自殺したのだと自分を責める和彦を、リーダー格の直人が優しく包み込む。そして下級生の則夫もまた、和彦を慕っていた。そんなある日、悠そっくりの薫という転入生が彼らの前に現れた……。(Amazon商品説明文改変)
感想:1988年に作られた1999年が舞台の近未来SF作品。舞台をドイツのギムナジウムから森に閉ざされた夏休みの寄宿舎へと変え、ストーリーも大胆にアレンジしています。登場人物を4人に絞った上、BGMは時折ピアノ曲が流れるのみという実験的な作品です。ですが、この作品の最大の特徴は4人の少年を『男装した少女が演じている』ということに尽きるかと思います。
配役は悠・薫=宮島依里、和彦=大寶智子、直人=中野みゆき、則夫=水原里絵(現・深津絵理)
あまりテレビで見かけない方もいらっしゃいますが、みなさん素晴らしい美少年です(そもそも女の子なわけですが)。しかもより少年らしくするため、声を少年声の声優に吹き替えさせるという徹底ぶり。声の配役は悠・薫=高山みなみ、和彦=佐々木望、直人=村田博美。則夫だけ深津絵理がそのまま演じています。吹き替えという感覚は薄く、前知識なしだとスタッフロールで初めて少年が少女であり、声が別人であると気づく可能性も高いです。
ちなみに原作は人間愛ですが、こちらは少年の姿と声で静かな愛憎劇を繰り広げます。
髪も切り少女を少年の姿へ変え、声までも少年に変えたことは、静謐で不可思議な雰囲気を作り上げ、淡々としてそれでいて切なく美しい作品をとすることに功を奏しています。ですがその一方で、監督の熱いフェチズムを感じずにはいられません。「俺はこんなのが作りたいんだ!!」という叫びが伝わってくるようです。
とにかく一見の価値あり。原作との違いやラストには賛否がありそうですが、映画としての完成度も高いです。
他の萩尾望都作品感想 危ない丘の家
『トーマの心臓』という漫画があります。1969年にデビューして以来、今なお漫画界の一線で輝く萩尾望都が『少女コミック』で1974年19号から52号に連載していた作品です。
![]() | トーマの心臓 (小学館文庫) (1995/08) 萩尾 望都 |
トーマの心臓/萩尾望都/全1巻(コミック文庫版)/少女コミック連載/学園もの/BL?
ある雪の日、少年トーマが「これは僕の愛、これは僕の心臓の音」という謎めいた遺書を先輩であるユーリに残して鉄道から飛び降りたことからこの話は始まります。
受け取った遺書を引き裂いてトーマと決別するユーリ。しかしそこへトーマそっくりのエーリクが現れます。
子どもっぽいけれど真っ直ぐなエーリク、品行方正を装いながら暗い淵でもがくユーリの他、ユーリと父への思いを抱えたシニカルな少年オスカー、オスカーを慕うアンテといった少年たちが登場します。
ドイツのギムナジウム(男子のみの高等中学)で、彼らは苦悩し、傷つき、そして時に傷つけながら「愛」というものを知って行きます。少年同士のキスシーンなどもあります。ですが性的なものではなく、描かれるのは純粋な人間愛――人が人を愛するということ。
同性愛ものなのでは?と躊躇するかもしれませんが、図書館にも置かれているかと思いますので、ぜひ手に取って見てください。
そしてこの少年同士の物語を原案として制作されたのが『1999年の夏休み』です。
![]() | 1999年の夏休み [DVD] (2001/08/22) |
粗筋:舞台はある全寮制の学院。初夏、悠が湖に飛び込んで自殺し、そして夏休み。和彦、直人、則夫の3人だけが家に帰らず寮に残った。悠は和彦に想いを寄せていたのだが、それを拒絶されたために自殺したのだと自分を責める和彦を、リーダー格の直人が優しく包み込む。そして下級生の則夫もまた、和彦を慕っていた。そんなある日、悠そっくりの薫という転入生が彼らの前に現れた……。(Amazon商品説明文改変)
感想:1988年に作られた1999年が舞台の近未来SF作品。舞台をドイツのギムナジウムから森に閉ざされた夏休みの寄宿舎へと変え、ストーリーも大胆にアレンジしています。登場人物を4人に絞った上、BGMは時折ピアノ曲が流れるのみという実験的な作品です。ですが、この作品の最大の特徴は4人の少年を『男装した少女が演じている』ということに尽きるかと思います。
配役は悠・薫=宮島依里、和彦=大寶智子、直人=中野みゆき、則夫=水原里絵(現・深津絵理)
あまりテレビで見かけない方もいらっしゃいますが、みなさん素晴らしい美少年です(そもそも女の子なわけですが)。しかもより少年らしくするため、声を少年声の声優に吹き替えさせるという徹底ぶり。声の配役は悠・薫=高山みなみ、和彦=佐々木望、直人=村田博美。則夫だけ深津絵理がそのまま演じています。吹き替えという感覚は薄く、前知識なしだとスタッフロールで初めて少年が少女であり、声が別人であると気づく可能性も高いです。
ちなみに原作は人間愛ですが、こちらは少年の姿と声で静かな愛憎劇を繰り広げます。
髪も切り少女を少年の姿へ変え、声までも少年に変えたことは、静謐で不可思議な雰囲気を作り上げ、淡々としてそれでいて切なく美しい作品をとすることに功を奏しています。ですがその一方で、監督の熱いフェチズムを感じずにはいられません。「俺はこんなのが作りたいんだ!!」という叫びが伝わってくるようです。
とにかく一見の価値あり。原作との違いやラストには賛否がありそうですが、映画としての完成度も高いです。
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